始末屋 妖幻堂

「大人しくしてりゃ、痛い目見ないで済んだのによ! ま、伯狸楼に来ることにはなっただろうけどな!」

 狐姫が逃げたので、鎖鎌の男は勢いづく。
 その様子に、他の男どもも気を取り直した。
 それぞれ、寸鉄や匕首、鉄甲などを構える。

「やっちまえ!」

 号令と共に、鎌が狐姫を襲う。
 ふわりと空気のように飛び、迫る鎌を避けた狐姫の前に、杉成が飛び出した。
 素早く番えた矢を飛ばす。

 だが今回は、相手は鉄の鎖鎌である。
 竹串のような細い矢は、男に届く前に、鎖に阻まれ叩き落とされた。

「まずはお前からだ!」

 鎖鎌の男が、鎌を杉成目掛けて振り下ろした。

 しかし。
 鎌は飛んできた美麗な鞠に弾かれる。
 先の禿の少女が、鞠を放ったのだ。

 続いて少女は、男が体勢を立て直す前に、懐から出した扇を放った。
 投げられた扇は、初めはふわりと緩やかに飛んでいたかと思うと、次の瞬間には速さを上げて、男に迫る。
 驚いた鎖鎌の男の顔を、しゃっと扇が裂いた。