始末屋 妖幻堂

「・・・・・・? へっ・・・・・・ぁぁあああっ?」

 口角を上げたまま、さらに狐姫に近づこうとしていた男の口から出た声が、次第に悲鳴に変わる。
 ごとり、と、切断された男の、狐姫の襟を掴んでいた右手が落ちた。

「汚い手で触れるでないわ。あちきに触れて良いのは、旦さんだけだよ」

 血のついた指先を、ぺろりと舐める。

 狐姫は、手を軽く払っただけに見えた。
 だがその瞬間に、男の腕を切断していたのだ。
 特に武器も持っていないのに。

「ひいいぃぃっ!」

 ようやく事態を飲み込み、腕のなくなった部分から血を噴出しながら、男が叫ぶ。
 店内に散開していた男の仲間も、一斉に顔を引き攣らせた。

「小太の居場所も生死もわかったことだし、あんたらぁ、己の価値が紙屑同然に落ちたことに、気がついておるかえ」

 にぃ、と笑う狐姫に、皆息を呑んだ。

「ちっくしょう! 女だからって、何しても生かされると思うな! ここまで知った奴を、そのままにしておくわけねぇだろう!」

 鎖鎌の男が激昂し、得物を振り回す。
 ち、と狐姫は後方に飛んだ。

 鎖鎌は厄介だ。
 不用意に近づけない。