「・・・・・・待ちゃれと言うに。小太は、生きて伯狸楼にいるんだろうね?」
座敷に上がり込もうとする男に、狐姫が問う。
男は馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、ぐいっと狐姫に顔を突き出した。
「ああ。うるせぇから、裏の蔵で縛り上げてあるが、ま、一応生きてはいるかな」
「小菊一人を取り戻すわりには、えらい必死だねぇ。小娘一人逃げたところで、別に構わないだろ。そんなしょぼい店でもあるまい」
「それが、そうもいかねぇんだな。あいつは裏要員だ。それでなくても、伯狸楼に入った女は、生きては出られないんだぜ?」
「・・・・・・ほぅ?」
狐姫の目が光る。
妖しい雰囲気にも気づかず、男は面白そうに話し続ける。
「店で働いてりゃ、裏事情にも明るくなる。伯狸楼には表に出せねぇ裏稼業がある。いくら岡っ引きを賄賂で黙らせても、そのまた上まで漏れりゃ、さすがの伯狸楼だってやばいぜ。だから、あそこの遊女は一旦入ったら死ぬまで出られん」
「身請け話があったり、年季が明けることだってあろう」
「一時と違って、遊女を身請けするような奴は、今時そういない。年季が明けたって、それまでに借金が膨大になっている。あんただってそんな格好してるんなら、知ってるんじゃないのかい? 置屋の借金なんて、増える一方で減ることはないってな」
座敷に上がり込もうとする男に、狐姫が問う。
男は馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、ぐいっと狐姫に顔を突き出した。
「ああ。うるせぇから、裏の蔵で縛り上げてあるが、ま、一応生きてはいるかな」
「小菊一人を取り戻すわりには、えらい必死だねぇ。小娘一人逃げたところで、別に構わないだろ。そんなしょぼい店でもあるまい」
「それが、そうもいかねぇんだな。あいつは裏要員だ。それでなくても、伯狸楼に入った女は、生きては出られないんだぜ?」
「・・・・・・ほぅ?」
狐姫の目が光る。
妖しい雰囲気にも気づかず、男は面白そうに話し続ける。
「店で働いてりゃ、裏事情にも明るくなる。伯狸楼には表に出せねぇ裏稼業がある。いくら岡っ引きを賄賂で黙らせても、そのまた上まで漏れりゃ、さすがの伯狸楼だってやばいぜ。だから、あそこの遊女は一旦入ったら死ぬまで出られん」
「身請け話があったり、年季が明けることだってあろう」
「一時と違って、遊女を身請けするような奴は、今時そういない。年季が明けたって、それまでに借金が膨大になっている。あんただってそんな格好してるんなら、知ってるんじゃないのかい? 置屋の借金なんて、増える一方で減ることはないってな」


