「じゃ、約束の金だよ」

「へぇ、確かに」

 上がり框に腰掛けていた老人が、風呂敷に商品らしい荷物を包んで立ち上がった。
 荷を背負いながら、ちらりと奥に目をやる。

「今日は、旦那は?」

 対応していた女は、薄く笑って鬢を掻いた。

「今日は行商の日で。大方いつもの調子で、姐さんがたに掴まっていなさるんでしょう」

「はは。そりゃ羨ましいこった。旦那も隅に置けねぇな」

 けらけら笑う老人は、女にきろりと睨まれて、ほな、と言い捨てると、そそくさと出て行った。