軽口を叩くものの、リリスの表情は浮かない。

「お前が思い当たる存在は?」

マカの言葉に、リリスは首を横に振って答えた。

「記憶の改ざん能力は、あまり魔女の世界では聞きませんね。魔女はあくまでも状況を生み出し、そして術を生むモノですから。マカ先輩の方は?」

「記憶の改ざんなら、私にもできるがな。だがあくまでもそれは数名のみ。一気に三十人近くの人物の記憶までは操作できない。それは他の同属達にも言えるな」

その力が大きければ大きいほど、そして複雑であれば複雑なほど、力を発揮する条件は厳しくなる。

「それなら…何か道具を使ったとは?」

「道具…。それなら有り得るかもな。だがそれに私が引っかからなかったということは…」