「そうだね。でもまあマカは昨日の夜は夜更かししていたと言うし、まだ寝惚けているのかもね」

柔らかな物腰と態度、明らかに普通の男子高校生とは言いづらい。

マカは困惑顔で、隣の席のミナを見る。

「マカったらぁ。1年の時から同じクラスのサクヤくんを忘れるなんて、昨日の夜、何をしてたのぉ?」

笑う顔には、どこにもおかしなところはない。

つまり、ミナはウソをついていない。

そしてクラスメート達も浮かべる笑顔から、マカを騙そうとしているワケではないことを感じ取れる。

しかしマカは思う。

昨日の放課後まで、確かに自分が一番後ろの席だったこと。

そして目の前にいるサクヤという人物に、今まで一度も出会ってはいないということを。