「そうですか…。まあ、姫様が蘭之介様をお慕いしているのは、気づいていましたが」

…やっぱりなぁ…。

「…ですが、そこまで姫様が思い詰めていらっしゃったとは…。近くにおりながら、気づきませんでした」

悔しそうに言う、日海。

「…どうすればいい?あたし、蘭のために、何ができる?」

蘭の幸せのためだったら、なんだってする。

「…姫様ができること…。素直におなり下さい」

「…素直に…?」

なったら、だめでしょ。

そしたら蘭が苦しむ。

「姫様。蘭之介様は、姫様のことを嫌ってなどおりません。あれは、姫様が蘭之介様に嫌いだと言わせただけのこと。…大丈夫です」

にこっと微笑んでくれる、日海。

「…素直に…」

「そうです。それでだめなんてことはありません」

日海が言うと、なんか説得力がある気がする。

「分かった…。頑張るよ、ありがとう、日海」

「いいえ。……姫様。私を、頼って下さい。迷惑だなんて思いませんから」

…日海…。

「頼って、いいの…?」

頼ったら、弱くなってしまいそうで怖い。

これ以上弱くなったら…あたし…。

蘭と釣り合わない。

「頼ることは、弱いことではありません。むしろ…強さが必要だと、私は思います」

強さ…。

「ありがとう、日海。……また、相談のってね」

微笑んで言った。

そしたら日海、嬉しそうに笑ってくれた。

…蘭にも、笑ってほしい。

たとえ、あたしが笑わせられなくても。

あなたには、ずっと笑っていてほしい。

大切な人は、いつも笑っていてほしい。

それが、あたしの望みなのかもしれない。