六花の約束

あたしは蘭を人の死角になるところへ連れてきた。

「……単刀直入に言う。蘭、あなた、何が嫌なの?」

「…は?」

本当に意味が分かっていないらしく、蘭は不思議そうにしている。

「だって、あたしに対して冷たいし。…あたしに稽古をつけるのが嫌なの?」

「………」

蘭は、黙ったままだ。

沈黙が続く。

あたしは痺れを切らして、もう一度問おうとした。

「ら…」

「…凜姫様は、津田様とご結婚なさらないのですか」

…はぁ?

あたしが質問したのに、いきなり質問を、変えた?

て、いうか、なんで津田さんがでてくんの?

…分からない。

けど、蘭が答えてくれるなら、いいか。

「しないよ。別に、好きじゃないし」

正直に言った。

「…本当ですか?私には、本音を言ってもらって構わないのですよ」

「本当だよ。好きじゃない。…だいたい、津田さんには…」

想い人がいる。

そう言おうとしたのに、蘭に遮られた。

「あんなに、仲がよろしそうでしたのに…」

…残念そうに言われた。

━ずきっ…。

また、胸が痛い。

なんで…?

蘭は、あたしと津田さんが結婚してほしいの?

約束したのに。

蘭以外と、結婚なんてしないって。

……ああ、そうか。

蘭は覚えていないんだった。

ははっ…馬鹿だな、あたし。

蘭があたしをなんとも思ってないことなんて、分かってたのに。

何を、期待していたのだろう。