「おはよう、凜姫」

津田さんは先に稽古場にいた。

「おはよう。いつもと違う場所で、寝れた?」

「おお、よく寝れたぞ」

……この人の神経、絶対に図太い。

「おはようございます、凜姫様」

あ、蘭…。

「おはよう。今日も、稽古よろしくね」

「……はい」

……?

蘭、今日なんか…暗い?

でも、いつもあたしに対しては冷たいもんな…。

よし、今日、そのわけを聞いてみよう。

ちょっと怖いけど…。

避けてばっかじゃ、何も変わらないから。

「凜姫。私は昼前には帰らねばならぬ。その前に、手合わせ願えるか」

「ああ、もちろん。今から…は、ちょっときついから、少し待ってて」

「分かった」

あたしは素振りを始め、津田さんも自分の練習を始めた。

蘭は…。

なぜか、津田さんを凝視している。

…なんで?

あ、津田さんが強そうだからか!

だから、観察しているのか。

納得。

って、納得してもな…。

あたしは負けないように頑張ろう。

津田さんに勝ったら…蘭ともやってもらおう。

…まだまだ、蘭には勝てる気がしないけど。

それほど、蘭は強い。

きっと、誰でも蘭にはかなわないだろう。

おそらく、父上も。

「…凜姫。そろそろいいかな?」

津田さんが声をかけてきた。

あ…。

そんなに時間、経ってたんだ…。

「いいよ、やろう!」