「…言いましたよね。私には決めている人がいると。そして、あなたもそうだと」

言った。

確かに、話した。

「はい。言いました」

「なら、この見合いはなかったことでよろしいですね」

「…もちろんです」

ああ、結局この人とは何もしないのか。

剣の対決も。

蘭の話しも。

態度を変えた。

ただの娘で、良かった。

そうしたら、蘭とも一緒になれた。

この人とも、もっと語れた。

こんなに話を解ってくれる人、いなかった。

「…ですが」

津田さんがいきなり言い出した。

「やはり、少し話しませんか。あなたほど話しが解る方はいない」

にこにこと笑いながら言う。

…思ってること、一緒だ…。

「…うんっ!」

嬉しくて、答えた声に力が入る。

「よかった。私のことは…さっきと同じでいいです」

「…じゃ、あたしも」

「…空?」

「で、いいよ。呼びやすいでしょ」

何でもよかった。

また、語れるのなら。

「…じゃ、空。君の想い人、分かった」

にやにやしながら言う、津田さん。

「……は!?」

なんで!?

なんで分かるの!?

「…なんで?って顔してる。…蘭って人でしょ」

「なっ、なんで!?」