蘭が、心配?

あたしを?

「…城にはお見えにならないし、聖域にもいない…焦りましたよ」

「…ごめん」

そんなに捜させて、悪かったな。

他の女房たちも。

けど、見合いが嫌なものは嫌だ。

「さ、お支度をしてください。津田様をお待たせしてはいけないでしょう」

「…分かった」

城に戻って、しぶしぶかんざしと化粧をしてもらった。

「お綺麗ですわ~」

「やはり、素がいいと違いますね!」

女房が口々にあたしをほめる。

でも、うれしくない。

これから見合いだと思うと、気が重い。

「凜姫様、お支度ができましたか?」

蘭があたしを呼びにきた。

「凜姫様?津田様がおまち…」

あたしが何も返事をしなかったので、蘭はあたしの部屋をのぞいた。

だけど。

途中まで言いかけて、止まってしまった。

…どうしたんだろう?

「蘭之介?どうしたの?」

不思議に思って聞いてみたけど…。

蘭、なんか顔赤い…?

「あらあら、隊長様ったら。姫様がお美しいからって」

「固まるなんて、かわいいですね」

女房たちがくすくすと笑う。

「…蘭…」

思わず、蘭と呼んでしまった。

「……お綺麗です、凜姫様」

…っ…!

やばい…蘭に綺麗って言われると、お世辞でもうれしい。

「…ありがと…」

「では、行きましょう」

そしてあたしは、津田さんとの見合いに向かった。