六花の約束

「…そんな顔したって、教えられない」

ここで姫だ、なんて言ってみろ。

どうせ、あんたらはあたしを軽蔑する。

だらしない、常識外れの姫だって。

「…あなたたちこそ、なんでこんな山奥にいる」

普通の道を通ってこれば、迷うことなどなかったのに。

「いやな、山道から行こうと思ったら、迷った」

わははと笑われても…。

答えになってるような、なってないような…。

「…実は、今日は見合いなのだ。海瀬城の姫様とな」

「…あっそ」

知ってるっつーの。

ていうか、あなたもあたしの名前を呼ばないんだ…。

別に、津田さんに呼んでほしいとは思わないけど。

「そうだ、空、そなた海瀬凜様について知らないか?」

「はっ!?」

いきなりだったから、変な声が出た。

あたしについて、あたしが話せと!?

「…うわさ通りだろ」

どうせ、男っぽいとか、がさつだとか…。

いいうわさではないけど、その通りだしな。

「…うわさ通り、か。じゃあ、相当剣が強い姫様なんだな」

どこかうれしそうに言う。

いや、負けたことは一回だけだけど。

蘭だけだけど。

そんなにうれしそうに言われても…。

「実は私は最初、凜様との見合いが嫌だったのだ。」

…あっそ。

嫌なら嫌でいいんだけど。

あたしだって見合いなんて嫌なんだから。

「…なんで、見合いする気になったのさ?」