六花の約束

山の奥。

木々が凜のいる場所を隠している。

誰も知らない、俺と凜だけの場所。

そこに、凜はいた。

泣いているのかは分からない。

ただ、うつむいている。

秘密の場所は、大きな池のようなものがあり、そのほとりは草花が咲き乱れている。

池の水は青色で透き通っている。

とても綺麗で神秘的な場所だから、「聖域」と呼んでいる。

凜に声をかけるかかけまいか迷っていたその時。

「……蘭?」

いきなり、凜が俺の名を呼んだ。

「…気づかれていましたか」

「…ここに来る人はあたしと蘭しかいない」

顔を上げて、微笑んで凜は言った。

「そうですね…。姫様が誰にもお教えしていないのなら、知る人はいないでしょう」

「……言うわけないだろ。秘密の場所なんだから」

…いつか、他の人に教えることになるだろうが。

将来の、城主に。

つまり、凜の夫に。

まだ、先のことであってほしい。

…こんなことを思っているから、凜は前に行けないのだろうか。

わからない、この世が。

この世の仕組みが。

「ねぇ、蘭。あたし、この世の仕組みが分からないの」

びっくりした。

凜も同じことを考えていたのか…。

「……私もです」

「それってさ、まだ子供ってことなのかな…?」

凜は悲しそうに笑った。

「…どうでしょう?それは、誰にも分からないのでは?」

凜は俺を振り返って、不思議そうな顔をした。

「…なぜ身分があり、なぜ身分違いだと結婚は許されないのか…。そんなこと、誰にも分からないとは思いませんか」