凜?

凜?

どうしよう、凜がいない。

声をかけようと思ったのに。

あ…日海さん。

凜付きの女房がいた。

「あの、日海殿」

いきなり声をかけてびっくりしたのか、声が裏がえっていた。

「はっ、はい?」

「あの…姫様は、どちらに?」

すると日海さんは困ったような顔をした。

「……私は何も知らないのです。たまにお一人でふら~っといなくなって…。どこへ行っているのかお尋ねしても、教えてくださらないのです」

教えてくれない?

じゃあ、凜が行っているところは…。

もう、凜の居場所がわかった。

でも、その前に…。

「あなたは、いつからこの城に…?」

ずっと気になっていた。

凜がすごく気を許す相手なのに、俺は知らない。

やっぱり俺は、凜のことなら何でも知りたいって思ってしまうみたいだ。

「…そうですね…。9年前ですわ。私、家と両親を火事でなくして…そこで姫様に拾っていただいたのです」

そうだったのか…。

「…つらいことを思い出させて、申し訳ありませんでした…」

「いいえ、姫様のおかげで、立ち直れましたから」

では、と笑ってさっていかれた。

…凜、やっぱりやさしすぎるよ。

日海さんも、凜の優しさに惹かれちゃったのかな?

だろうな~。

俺だって、凜の優しいところ、側にいてほっとする。

そんな凜が、今泣いてるかもしれない。

早く…早くいかなきゃ。

俺は凜がいるであろう場所に向かった。