ー刹那。

蘭はあたしの目の前にいた。

はっや…!

蘭は竹刀をあたしに突きつける。

ぎりぎりのところでかわした。

でも、あたしにやり返すときを与えないつもりか、どんどん斬り込んでくる。

「…くっ…」

きっつい…。

竹刀を持っている手が熱い。

全身がなにかに刺されているように感じる。

気を失いそうになる…この感覚。

気がつけば、あたしは竹刀を持っていなくてしゃがみこんでいた。

あたしの頭上には蘭の竹刀が突きつけられていた。

「…参り…ました…」

強い…。

悔しい…。

「…え…姫様が…」

「なんという強さっ」

周りの声すら、遠く感じる。

…負けた…。

「姫様、戻りましょう。…恥ではございません。精一杯の結果です」

日海がそばで言っている。

励ましてくれてるのに、それさえも遠い。

なにもききたくない…。

初めて負けた…。