お互いに間合いをとっている。

蘭が仕掛けてくる様子はない。

なら、あたしからいくまでだっ。

あたしは体勢を沈め、すぐさま蘭の懐に竹刀を入りこませる。

そのまま体を沈めたまま、蘭の喉に竹刀を先をいれ…終わらせる、はずだった。

これがあたしの得意な戦法。

よけられた人はいない。

なのに、蘭は…。

竹刀を喉に突きつけたとき、そこに蘭はいなかった。

そんなっ…。

「あの姫様の速さをさけた…?」

周りの人も驚いている。

あたしより、蘭のほうが速いのか…。

…おもしろい!

あたしはまた攻めた。

今度は三段突き。

下段、中段、上段。

普通はそうだけど、あたしは中段を入れないように見えるらしい。

速いから。

でも。

「おおーっ」

そんなあたしの得意分野を蘭は二度も避けた。

「…っつ…」

なんで…?

なんで止めない!?

蘭の実力はもう分かった。

あたしより断然強い。

なのに、なんで止めないの!?

「…っ…蘭之介っ!手加減はなしだと言ったはずだ!」

「…え?これが本気じゃないのか!?」

周りの人は、蘭の実力を計りきれていなかった。

「…では、いきます…」

蘭の身にまとっている雰囲気が、変わった…。