六花の約束

あ…やべぇ…。

口に出しちゃった…。

彼女がこちらに来る。

あっ、会ったらいけないんだ…。

俺は城の影に隠れた。

ここならばれない。

「姫様!まだ華道が終わっていませんよ、戻ってください!」

「だから、もう終わり!嫌いなんだよ、ちまちまやんの」

なんだ、華道が嫌で逃げてたのか…。

凜らしい…。

凜はすべて完璧にこなす。

だから決して華道もできないわけではないんだろうけど…。

自分で言ってたように、ちまちましたことは性に合わないんだろう。

「あ、姫様。髪に桜がついていますよ。私、とりましょうか」

通りがかりの武士が申し出た。

その人が凜の髪に触れようとした瞬間。

「…やっ!」

いきなり、凜が身を引いた。

「…え?」

突然のことに驚いている女房。

大切な姫に避けられて呆然としている武士。

俺にもなぜ凜が避けたのか、分からなかった。

「ご、ごめん。小太郎が嫌ってわけじゃないよ、ただ…」

焦って言い訳を探している、凜。

……武士の名は小太郎というのか。

俺や凜よりは年下だろう。

幼さの残る顔立ちだ。

…まあ、おそらく俺も人のこと言えないんだけど。

「…昔、大切な人に髪を守ってもらって。その人以外の人に、髪を触られたくないんだ。ごめんね」

……え?