六花の約束

殿と父上は歩いていった。

「……どーしよっかなぁ…」

とりあえず、そこらへん歩くか…。

あ…桜…。

今は春。

城内にある大きな桜の木の桜が満開だ。

「こんな大きな桜の木、あったっけ…?」

幼いころだから、記憶があいまいだ。

それに、城内ではあまり遊ばなかったから。

「きれいだな…。…あの人みたい…」

いや、あの人はもっと繊細かな…?

このことを、もしあの人が聞いたのなら、即座に否定するだろう。

あたしはこんな綺麗で可憐じゃない、って。

あたしはもっと強いんだ、って。

あの人のうわさは、江戸にも流れていた。

15になっても結婚していない。

剣が男顔負けの腕前。

性格、姿、すべてにおいて男みたいだと。

あげくの果てに、結婚していないのは容姿がよろしくないからではないか、なんてでたらめのうわさが流れた。

ふざけんな。

あの人はそこらへんの女性よりも、断然美しいんだ。

断然優しいんだ。

断然…繊細なんだ。

何も知らないくせに、知ったようなことを言うな。

何度そう怒鳴りそうになったか。

そんなうわさ、かき消してやりたかった。

でも、あの人にとって俺はなんなんだ?

いまでもあの約束を覚えているのは、俺だけなんじゃないのか?

そう思ってしまったら、なにもできなかった…。