海瀬城。

相変わらずの大きさ。

門番が二人、立っていた。

「失礼ですが、どちら様ですか?」

「九条と申します。殿様に、取りついでいただけませんか」

そんな簡単に城に入れるのかよ…。

「……失礼ですが…」

やっぱりなと思った、その時。

「その者たちは私がよんだ。通せ」

「はっ、殿!」

「失礼いたしました。九条殿」

宗次郎様…。

あの人の、父親…。

「悪いな、翔之介。私が先に言っておくべきだった」

「殿がそのようなことを簡単に言うものではございませんよ」

父上は苦笑して返した。

その通りだよな。

あの人と同じで、殿も、奥様も、この城の人はみんな優しい。

優しすぎるんだよ…。

どんなわがままでも、笑って許してくれたり。

城のものを壊しても謝ったからいいよ、って許してくれたり。

普通の殿とかだったら、許すわけない。

よくて出入り禁止、悪くて死刑。

そう考えたら、ここの城の人は優しすぎるってのも、わかるんじゃない?

そう物思いにふけっていたら、いきなり父上が俺を呼んだ。

「蘭之介、私は殿と話がある。お前は好きにしていなさい」

「…好きに?」

この城内で、か?

「蘭之介、この城内なら、どこに行ってもよいぞ。ただし…」

殿は少し苦い顔をして続けた。

「まだ、凜には会わんでもらえるか」

……え?

なんで…?