六花の約束

私は彼の名前を呼んで、立ち止まった。

「!?なんで…傘もささずに…!寝てないと熱が…」

「そんなことより、伝えたいことがあったんです」

「それは、君の身体よりも大切なことなのか?」

「…ええ、恐らく」


今の私にとって、これは一番大切だと思うの。







「私、あなたのことをずっとお慕い申し上げておりました。今もです。だからあなたと夫婦になれて、本当に嬉しかった」


私の告白を、実夏樹様は信じられないといった表情で聞いている。


「会ってくれなくて寂しかった。優しくされて嬉しかった。あなたにとって、私が妻であることは幸福ではない。そう思うたび、辛かった」


ねえ、実夏樹様。

これで終わりにします。

私の恋を…。



「…あなたは、私を好いていないのでしょう…。でも、私は…あなたを…」


ふわふわしてきた。

立っているのかも分からない。

雨が異常に冷たい。


「…今宵のことは、どうか夢とお思いくださ…い…」

私はぐらっと、身体が傾くのを感じた。


ああ、倒れるのか。

そう思ったのに…衝撃はいつまで経ってもこない。

それどころか、心地よい温かさに包まれた。