六花の約束

「ん…」

額に冷たいものが置かれた気がして、目を覚ました。

「起きたのか?」

隣にいたのは、実夏樹様だったらしい。

冷たいと感じたものは、実夏樹様の手。

そこまで冷静に考えて、はっとした。

「実夏樹様、手が冷えています…!温めないと…けほっ…」

「ほら、まだ熱があるんだ。寝てないと…」

実夏樹様はそう言って、あたしの髪を梳いた。

…なんで。

なんでこんなに優しくするの…?

私のこと、なんとも思ってないくせに…。

「なんで…?」

「ん?何」

「なんでこんなにも、優しくしてくださるのですか…?」

すると実夏樹様は少し驚いたような顔をした。

「妻に優しくするのは当たり前だろう?」

…そんな言葉が、ほしいんじゃない。

私がほしいのは、実夏樹様の本心。

「…今まで、会ってもくれなかったじゃないですか…。会ったとしても、曖昧な会話をするだけで。…どうしてですか?どうしてあの海で会った日から、変わったんですか?」

もう、あなたが何もかも分からない。

実夏樹様は困ったように、でも、はっきりと。














「…会いたく、なかった」



そう、ぽつりと。


言葉をもらした。