そんな私に、手を差し伸べてくれたのは、あなたでした。


『大丈夫?』

ふと差しのばされた小さな手。

その手の人を見ると…可愛らしい女の子が立っていた。

『ここは火の近くだから危ないよ。早くどこう』

『…嫌…お母様とお父様のところへ行くの…』

『……死にたいの?』

女の子は、驚くほど大人びていた。

『死にたいの?』

女の子がもう一度、問う。

死にたい…?

それで二人に逢えるのなら。

嘘、死にたくない。

生きたい。

『…死にたく、ない…』

すると女の子はにこっと笑って、私の手を握った。

『なら、あたしと一緒においで』

その無垢な微笑みに私は魅せられた。

私よりも小さな手を握りかえして、立ち上がった。

その時。

『姫様!なんでこんなところにいらっしゃるのですか!?危険ですから早くあちらへ!』

武士らしき人が、私たちの前へくる。

『この子が心配だったの!いいよ、すぐに行くから』

私は驚いて…女の子を見た。

彼女はにっこり笑って

『あたしの名前は海瀬凜。よろしくね』

と言った。



…お姫様、だったのか。

私は驚きで声も出なかった。

お姫様の綺麗な頬はすすで黒くなって、綺麗な着物は所々燃えてしまったみたいだ。

…こんなになってまで、私を…。

『あなた、名前は?』

『…日海…』

『ひあま?お日様に海?』

『はい…』

『いい名前ね!日海、行くところなかったらあたしと一緒においでよ』

あなたの笑顔が眩しくて。

お日様に光る海よりも、ずっと美しく輝いていて。

あなたのために…何か恩返しがしたいと、思った。

『…は、い…』

私の答えに、あなたは満足そうに微笑んだ。














私が8歳で。

あなたが、まだ6歳だったときのこと。