今から10年前。
******************
「え?江戸にいく?」
その日は、雪が降っていた。
この地域では、「六花」という。
六花と書いて、「りっか」。
雪が、六つの花びらのようにみえるからだ。
いつものように蘭と遊んで、二人だけの秘密の場所にきたとき、突然蘭に言われた。
「うん。僕ね、凜を守れるくらい強くなって、戻ってくる」
「……やだよ」
「…凜?」
「蘭がいなくなるんでしょ?いやだよ!あたし、蘭とずっといっしょにいたい!」
泣いて、蘭を困らせた。
「…凜」
困ったように笑う、蘭。
「……凜、これ」
そう言って蘭は、かんざしを差し出した。
あたしは泣きやんで、かんざしをまじまじとみた。
「……きれい…」
「これ、凜にあげる」
幼いながらに、それがとても上等なものであると分かっていた。
「もらえないよ、こんな高価なもの」
あわてて断っても、蘭はそれをあたしに握らせた。
「凜に、持っててほしいんだ。約束の証として」
「……約束?」
「…凜…」
急に真面目な顔であたしを見つめて、蘭は言った。
「僕、強くなって戻ってくる。だから…」
いったん切って、蘭は続ける。
「……凜…、僕が戻ってくるまで、結婚しないで…?」
「……蘭?」
どうして?
どうしてそんなこと言うの?
「…凜、僕が戻ってきたら、結婚しよう?」
時が、止まったかと思った。
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「え?江戸にいく?」
その日は、雪が降っていた。
この地域では、「六花」という。
六花と書いて、「りっか」。
雪が、六つの花びらのようにみえるからだ。
いつものように蘭と遊んで、二人だけの秘密の場所にきたとき、突然蘭に言われた。
「うん。僕ね、凜を守れるくらい強くなって、戻ってくる」
「……やだよ」
「…凜?」
「蘭がいなくなるんでしょ?いやだよ!あたし、蘭とずっといっしょにいたい!」
泣いて、蘭を困らせた。
「…凜」
困ったように笑う、蘭。
「……凜、これ」
そう言って蘭は、かんざしを差し出した。
あたしは泣きやんで、かんざしをまじまじとみた。
「……きれい…」
「これ、凜にあげる」
幼いながらに、それがとても上等なものであると分かっていた。
「もらえないよ、こんな高価なもの」
あわてて断っても、蘭はそれをあたしに握らせた。
「凜に、持っててほしいんだ。約束の証として」
「……約束?」
「…凜…」
急に真面目な顔であたしを見つめて、蘭は言った。
「僕、強くなって戻ってくる。だから…」
いったん切って、蘭は続ける。
「……凜…、僕が戻ってくるまで、結婚しないで…?」
「……蘭?」
どうして?
どうしてそんなこと言うの?
「…凜、僕が戻ってきたら、結婚しよう?」
時が、止まったかと思った。


