六花の約束

波風が、さぁっとあたしたちを吹き抜け。

冷たい海の水が、あたしたちの足を濡らす。

どちらも目を反らさないまま。

何もしゃべらないまま。

時間だけが、過ぎていった。






この沈黙を破ったのは、蘭だった。

にこりと、微笑みながら。

あたしの頬に…手を伸ばす。

「いつになったら、泣き虫卒業できるんでしょうね」

あたしは………泣いていた。

「…帰りましょうか」

まるで、さっきの告白など。

さっきの敬語が外れた話し方など。

さっきの…昔に戻ったような感覚すらも。

なかったかのように…蘭はあたしに背を向ける。




“行っちゃ、やだ”

“あたし、まだ返事してないよ?”

“それとも…さっきのは冗談?”



いろんな想いが、駆け巡る。




「蘭っ…」

あたしはたまらず、歩いて行こうとする蘭の背中に、呼びかけた。

「なんですか?」

蘭は振り返らずに、答える。

それが無性に、なぜか悲しかった。