★蘭side★

俺はさっと海の中にあったものを拾って、振り返った。

「…凜姫様…」

どうして、凜がこんなところにいるんだ。

羽織りを着て、寒そうな格好で。

「蘭…何、やってるの?」

「何、とは?」

何が何だか分からなくて、思った通りのことを聞いた。

「だから、こんな寒いのに…なんで海に浸かってるの!!風邪ひいたらどうするの!?」

凜はそう怒って…自分も入ってこようとした。

俺は慌ててそれを止める。

「何なさるのです!まだ完全に治っていらっしゃらないのに…またぶり返しますよ!!」

「……………」

凜は何も言わずに、ぶすっと俺を見ている。

「今そちらに行きますから…。お願いですから、入らないでくださいね」

「…分かった」

全く、この姫は…。

内心呆れつつ、俺は砂浜へ向かった。








手の中にあるものが、何なのかを知らずに。