六花の約束

そんなちょっとした幸せにひたる時間もなく。

母上は、あたしに。

「…姫、そろそろ自分の幸せについて考えなさい。あなたももう15…結婚してもよい齢よ?」

そんな、あたしにとっては残酷なことを言った。

「…母上…それは」

「あなたには、幸せになってもらいたいの。そして、この海瀬を継いでもらいたい」

…分かってる。

「もう、こんな怪我なんて…してほしくないの。あなたは女の子よ?」

分かってる、母上の気持ちなんて。

「戦いは、男のすることよ。あなたは護られて、姫らしくしていればそれでいいの」

分かってた。

母上が、ずっとそれを望んでることくらい。

分かってた、でも分かりたくなかった。

あたしを否定しないで。

確かに普通の姫とは違うけど。

それでも、あたしはあたしだよ。

凜なんだよ。

あたしの生き方を…認めてほしい。

「…母上が、心配してくださっていることは分かります。嬉しいと、思います」

「だったら」

「でも。…でもそれ以上に、あたしは戦える姫なんです。みんなの無事を、ただ祈っているだけな女は、嫌なんです」