六花の約束

水の中…。

いきなり落ちたから、息が続きそうにない。

それに…着物が水を含んで重い。

……傷が…しみて痛い…。

そんなこと、蘭には絶対言えないけど。

とにかく今は、海面目指して泳ぐしか…。

…けっこう深い…。

どうしよ、息が…。

それに…左肩が痛すぎて…右手しか使えない。

くそ…。

もう…だ、め…。

その時、右腕を掴まれた。

そのまま、上に引っ張られる。

あ…蘭か…。

海面が近づく。

「…凜姫様、ご無事ですか!?」

「ごほっ…げほっ……へい、き」

あたしは喉に詰まった水を吐き出して、答えた。

「うわ…しょっぱい…」

塩の味がする。

「……申し訳ございません…」

「何が?」

別に、謝られることなんて、なにもしてないでしょ。

むしろ、あたしが仕出かしたっていうか…。

「…暴言を吐いてしまいました」

「あ…ああ~。別に、気にしてないよ?むしろ、昔みたいでうれしかった」

昔は、お互い言葉に遠慮なんてなかった。

それより、今は…。

「蘭…ごめん、傷がしみて痛いんだけど…」

「あ…すぐに海から出ましょう。…乗ってください」

「え、いや、泳げるよ?」

…一応。

すると、蘭は何も言わずにあたしの右腕をとって、自分の背にあたしを乗せた。

そのまま…傷に水がつかないように、蘭は泳いでいった。