六花の約束

あたしは走った。

無我夢中で。

敵に向かって。

「凜姫様っ」

蘭じゃない、声がした。

「…え…」

誰…。

あたしは声がしたほうを見た。

怯えた目をした、女。

「……お菊さん…?」

蘭の、母上。

「なんでっ…逃げてよ…!」

何故、いる。

「母上!?」

蘭も、焦った声を出した。

そこであたしは、お菊さんが貝を手に持っていることを知った。

そっか…。

海に、行っていたから…知らなかったんだ。

ここで、争いが起きていることを。

「早く逃げて!危ないからっ」

逃げてくれないと…あたし…。

守れない…。

戦えない…。

「死ねっ、この女!」

山賊の一人が、お菊さん目掛けて、剣を…振り下ろした。

「母上ー!!」

蘭が、絶叫する。

お菊さんの顔が、恐怖に歪む。

あたしは…敵に背を向けて、走った。