六花の約束

幸い、斬った傷は浅かったようだ。

…もっと深く刺していたら…。

考えるだけで、ぞっとする。

人を…殺したくない。

たとえ、敵だとしても。

「…やってくれんじゃねぇか、姫さんのくせに」

「はっ、ふざけるのも大概にしとけ。…あたしは、普通の姫じゃないんだ」

女らしくない。

姫らしくない。

そんなあたしだから、母上は、きっと…。

あたしに失望している。

もっと女らしくしなければ…。

そんなこと分かってる。

けど…。

「凜姫様!」

はっとした。

…ときにはもう、遅かった。

短刀を…折られた。

「くそっ!」

戦うときに、考え事してちゃだめだな。

…どうしよう。

戦うものがない。

「…凜姫様は、ひたすら逃げてください。後は、私が」

「ごめん、蘭」

どうやら、そうするしかないようだ。

剣を避ける。

それはけっこうな集中力を要する。

…逃げてるのは、性に合わないが…仕方ない。

「相手してくれよ、姫様」

武器のないあたしを見て、にやにやしている山賊。

「あたしだって、相手してやりたいよ」

でも出来ないんだって!

そんなあたしの動きを見てか、山賊たちは目標を蘭からあたしに変えた。

…嘘だろ…。