あたしは、もうあの時の弱いあたしじゃない。

戦える。

守れる。

…恐怖を感じないと言えば、嘘になる。

子供のころの恐怖は、忘れてはくれない。

でも。

それでも、守りたい、ものがある。

大切な、約束がある。

そのために、あたしは…。

そのために、できることは…。

人質解放。

あたしは美奈子の母上に近づいていく。

今のところ、山賊たちは蘭に気をとられていて、あたしに気づいていない。

…良い機会だ。

「…美奈子の母上。助けにきた」

あたしを見て驚いた顔をした、女。

叫びそうになったから、あたしは口をおさえた。

「叫んだら、見つかるだろ。…さ、逃げるぞ」

幸い、女は拘束されてはいなかった。

だから…簡単に逃げられると思ったんだ。

その考えが……甘かった。