「との~!姫さんがっ、山賊にっ、おそわれ…て!」

息も切れ切れに説明してくれる、男の子。

「なんだと!?凜、無事か!?」

「ああ、姫よ…!」

父上は血相を変えてあたしを見て、母上は今にも失神しそうだ。

そんな母上を、父上は抱き留める。

「しっかりいたせ、お花。凜は無事のようだから」

あたしの姿を見て、心配ないと判断した父上は、母上に言う。

「父上…母上…」

「姫よ、よくぞ無事でした…!」

母上は泣きながら、あたしを抱きしめてくれた。

「はは…うえっ…」

あたしも、母上の腕のなかで泣いた。

ひとしきり泣いて、気が晴れたあたしは、男の子を見る。

「ありがとう、助けて…くれて」

「いいよ。…よかったよ、間に合って」

「本当に、ありがとう。蘭之介」

「いえ、俺は…何も。姫さんが頑張っててくれたから」

そう言って、男の子はにこっと笑った。

その笑顔を見た瞬間…。

…とくんっと、心臓がはねた。

「名前…なんていうの?…あ、あたしは凜だよ」

なんとなく、名前を聞くときは自分から、というのが癖になっていた。

「俺は、九条蘭之介!」

「蘭之介…。蘭って、呼んでいい…?」

「いいよ!じゃあ、俺は…」

「凜…って、呼んで…」

初めての、友達。

「え…いいの?姫さんなのに?」

「あたしは姫らしくない姫なの。だから…凜がいい」

「……じゃあ、凜だね。よろしく」

蘭はまたにこっと笑った。

蘭が笑う度、あたしの心臓はとくんっとはねる。

この感情が恋だと気づくのは、まだまだ先の話…。

***************