「凜姫様、そろそろ帰りましょう。皆心配しているでしょうし」

「…そだね…。ありがと、蘭」

凜はすっきりした表情で俺を見上げた。

よかった…元気出て。

「凜姫様。私には、頼ってください。甘えてください。…叶えられることなら、全て叶えますから」

「……ありがとう。でも、大丈夫。蘭がいてくれるだけで…あたしは強くなれる」

どういう意味だよ、それ。

…期待…しちゃうんだけど。

なんて、そんなことありえないか。

聖域を出て、けっこう歩いていたら。

いきなり…殺気を感じた。

そして、俺は見た。

何者かが、凜を狙っていた。

凜めがけて、弓を持ち、そして…。

放った。

飛んでくる矢は、凜の胸を狙って…。

━否、心臓。

まずい。

とっさに俺は、凜の首に右腕を回し、凜を俺の方へ引き寄せる。

そして左腕で飛んでくる矢を、うけた。

「…っ…」

敵は、忌々しそうに俺を睨みつけ、去っていった。

「蘭!?何が…嘘…やだよ…」

凜は一瞬のことに頭がついていけず、泣きそうになって俺を見る。

「平気です、このくらい」

「…死なない?」

…ちょっと矢が腕に刺さっただけなんだけど…。

「毒、塗ってない!?」

そっちか…。

「大丈夫のようです。…少し痛みますが…すぐ治ります」

本当に、大したことはなかった。

だけど…一体、誰が凜を狙ったんだ?

俺がいなかったら、凜は…。

…想像もしたくない。

……とにかく、殿に相談しよう。

凜は、絶対に守る。

死んででも。