六花の約束

なんで…。

「凜姫様?」

「いかないで…」

普段の凜からは想像もできないような、弱々しい声は震えていて。

俺の着物を掴む手も、小刻みに震えている。

それでも…離そうとはしない。

「…一人に…しないで…」

━俺の、心臓が跳ねた。

初めて見せてくれた、凜の弱さ。

もう…止まらなかった。

俺は、自分の立場を忘れそうになりながら…凜を、抱きしめた。

「やっと…頼ってくれましたね」

「ら…ん…?」

「…泣いてください」

凜に今必要なのは…甘えること。

怖い目にあったのだから、人の温もりが恋しいのだろう。

たとえ…俺が必要なんじゃなくても。

凜のために、何かしたかった…。

「蘭…一昨日は…ごめ…なさ…。あたし…あんなこと…思ってないよ…」

「…分かってますよ」

なるべく優しく…凜に、言いたいことを全て言ってもらうように。

凜の背中をなでる。

…本当は、ずっとこうしたかったんじゃないかと…思う。

凜に…好きって…伝えたかった…。