六花の約束

「…蘭、しなくていい」

まだ言うのかよ…。

俺は構わずに頭を下げようとした…けど。

「父上ー!お助けくださいっ!!」

…凜が…叫んだ?

「このっ…」

「どうした、凜!?」

天城が剣を振り上げるのと、殿がみえたのはほぼ同時。

「天城殿。少し話そうか」

黒い…黒いです、殿。

「…ちっ…」

舌打ちしてんじゃねぇよ。

凜をさんざん怖い目にあわせておきながら…。

「…お待ちください、父上。あたし、その人と試合します」

「…いいえ、私が、やります」

凜に、やらせるくらいなら。

俺がやる。

天城に恥かかせてやるよ。

「いいだろう…凜、すまなかった」

そう言い残して、殿は部屋を出ていった。

凜のほうを振り返ると…凜がよろめいた。

「凜姫!?大丈夫ですか!?」

無理しすぎなんだよ…。

すぐさま凜に駆け寄って、座った。

「…へいき…。ら…ごめ…」

…は?

「何を謝るのですか。姫は何も悪くありません」

「だっ…て…」

全くこの優しすぎる姫様は…。

なんで謝る?

俺ごときに。

謝らないといけねぇのは、俺のほうだろうが。

「…怖かったんですね。…もう、大丈夫ですから」

俺は凜の口元の傷を見た。

ひどくはないけど…。

「…日海殿を、呼んできます。傷の手当てをしてもらいましょう」

俺が、凜のそばにいないほうがいい。

男に、あんなことをされて…凜は恐怖で震えている。

俺だって男だ、怖いだろう。

だから、立ち上がっていこうとしたのに。

…凜が、立ち上がった俺の着物の裾をつかんだ。