六花の約束

そんなこと考えもしないだろうけれど。

言っても、信じないだろうけれど。

「…蘭。あたしはね…みんなが幸せだったら…それでいい」

「ご自分の幸せも考えてください。…私どもの幸せは、あなたが幸せであることなのですから」

みんな、考えは同じなのだろうか。

大切な人は、幸せであってほしい。

つらいことなど…あってほしくない。

そう思うのは、相手への想いが強いから。

あたしは、そう思う。

「…蘭。…あの頃は楽しかったね…」

言ってはいけないことを、あたしは言おうとしている。

言っちゃだめだと、頭では解っていても…心は言いたいと叫んでる。

「蘭。あたしね…覚えてるよ、あのこと」

言ってしまえば、もうこの蘭との関係も終わってしまう。

言いたいという衝動を、無理やり押し込んで、別のことを言う。

「覚えてるよ。蘭が…あたしを助けてくれたこと」

「…助けた?いつですか?」

よかった…。

想いを告げるところだった…。

「初めて蘭と出会ったとき。…山賊に襲われそうになったところを、助けてくれた」

「…ああ…思い出しました」

にこにこ笑って、蘭は言う。

あたしの、心の想いを何も知らずに。

「蘭が、助けてくれた。…今日もだね」

ううん、今日だけじゃない。

いつも、いつも、あたしは蘭に助けてもらってる。

蘭がそばにいなかった十年間も。

ずっと蘭を近くに感じていた。

…そのときのほうが、よかったのかもしれない。

近くにいればいるほど、もっと蘭を感じたくなってしまう。

言ってはいけないことを、言ってしまいそうになる。

苦しくて、苦しくて。

…全てを、終わらせたくなってしまう。