思わず口に出たその言葉を、天城は聞き逃さなかった。

「凜、死にたくないって。…お前が土下座したら、許してやるよ」

「!」

蘭に、土下座しろと…!?

武士にとって、土下座は覚悟がいること。

そう簡単にするものではない。

蘭に…土下座なんてさせない。

「蘭、あたしはいいから。こいつの言うことなんて、聞かなくていいよ」

「………」

蘭は、困惑した表情をしている。

「どうした?早くしろよ」

天城は楽しそうに蘭を見る。

蘭が、膝をついた。

まさか…土下座する気か!?

「蘭、だめだっ!こんな奴のために、土下座なんてする必要ない!」

嫌だ、蘭がこんな奴の言いなりになるなんて。

なのに、蘭は。

笑ってこう言うんだ。

「凜姫のためなら、何だってできるんですよ。…俺にとって一番大切なのは、あなただから」

……!

うそ…。

蘭、やだよ。

「…蘭、しなくていい」

だって、あたしにとっても大切なのは蘭なんだよ。

あたしは大きく息を吸って、叫んだ。

「父上ー!お助けくださいっ!!」

「このっ…」

天城はとっさに刀を振り下ろそうとした。

でも。

「どうした、凜!?」

父上がきてくれる方が、早かった。