六花の約束

「蘭。あなた、あたしが嫌いなんでしょう?だから、あたしにだけ冷たくするのよね」

凜…?

「…凜姫様、どうなさったのです。私が凜姫様を嫌いになど、なるはずが…」

「じゃあなんで!?なんで、あたしには冷たくするの!?」

…嫌いに、なってほしいから。

凜が自嘲ぎみに言うから、いい機会だと思った。

「蘭、はっきり言って。あなたはあたしが嫌いなんでしょう?」

さらに、言ってくる凜。

やっと…やっと、凜に嫌われることができる。

…そう、思うのに。

「そんなわけっ…」

心は、本当の気持ちを言ってしまう。

「…あなたは、あたしが嫌いなんでしょう?あなたはあたしを守ることが仕事。だから、立場上あたしを嫌えない」

…そういうことにしておこう。

凜が、納得してくれれば、いい。

「でも、本音は…?本当は、あたしが嫌いなんだよ、蘭」

「………」

何も、言えなくて。

「結婚すればいいと思ってる。好きじゃない人でも。それが、この海瀬のためだから」

あと、少し。

あと少しで、自分自身に本当に嘘がつけそうな気がする。

「……そうかもしれません。確かに、あなたには幸せになってもらいたい。望まない結婚など、してほしくはありません」

「……で?」

凜が、促す。

「でもやはり、私にとって大切なのは…」

この期におよんでまで、何を言おうとしているんだ、俺は。

「大切なのは?…仕事でしょ?義務が大切なんでしょ?」

「だからっ…」

凜の言う通りだって、言えばいいんだ。

嘘を、貫け…。