六花の約束

凜について、人の死角になるところへ行く。

「…単刀直入に言う。蘭、あなた、何が嫌なの?」

「…は?」

質問がとうとつすぎて、理解できなかった。

なにが嫌?

…俺自身、全て。

いや、凜が聞いていることは、そんなことではないだろう。

「だって、あたしに対して冷たいし。…あたしに稽古をつけるのが嫌なの?」

「………」

冷たくしていたの、分かってたんだ…。

稽古をつけるのが嫌…。

それもあるかもしれない。

でも、俺が一番嫌なのは…凜が離れていくこと…。

馬鹿だよなぁ、俺。

もう、本当に終わりにしたほうがいいのかもしれない。

…10年以上の、この想いを。

「ら…」

「…凜姫様は、津田様とご結婚なさらないのですか」

凜が何か言いかけたのを遮って、話す。

「しないよ。別に、好きじゃないし」

…本当かよ…。

「…本当ですか?私には、本音を言ってもらって構わないのですよ」

凜が、我慢していると思ったから。

「本当だよ。好きじゃない。…だいたい、津田さんには…」

「あんなに仲がよろしそうでしたのに…」

わざと、残念そうに言う。

好きじゃないって聞いて、嬉しかった。

だけど、嬉しいなんて言ったら…意味なんてないから。

凜の、次の言葉を待つ。

でも、何も話さない。

「凜姫様?」

「…蘭。あなた、あたしに結婚してほしかった?」

…してほしく、ないよ。

でも言えなくて。

黙っていたら、凜はさらに驚くことを言い出した。