あの夏の君へ






仕方なしに同意をした。

「本気?」

「うん」

誰も通らない階段。

二人の視線だけが交差した。

「俺が恥ずかしいから、目瞑ってや」

近づいてくる彼の顔に、心を決めて目を閉じる。

目を閉じれば瞼の奥が熱くなった。

眉間にシワが寄る。

「亜樹ちゃん…」

彼の胸を咄嗟に突き放した。

「ごめん…」

不意に涙が溢れた。


瞼の奥に彼がいた。

悲しそうにこっちを見ていた。

それは紛れもなく、荻の顔やった。

自分に否定をしたい。