あの夏の君へ






廊下をひたすら歩いていると予令のチャイムが鳴った。

「亜樹ちゃん、どこ行くん?」

「…」

「ねぇってば!!」

「…大声出したい」

「へ?」

「叫びたい」

無性に叫びたい。

犬と同じくらい吠えたい。



「何かあった?」

「別に」

「絶対何かあった」

「ないない」






「荻でしょ?」






その言葉を拍子に私の足が止まった。

「図星?」

「何で分かったん?」

「亜樹ちゃんの感情揺らすって、あいつしかおらんやん」

少し寂しそうに彼が人差し指を立てた。

そんな顔せんといて。

「…」

「あいつの足、殴っても良い?」

彼の言葉に痛みを感じた。