あの夏の君へ






急いで階段を登って、改札口へ向かう。

改札口の近くに制服姿の荻がポツンと携帯をいじりながら立っていた。

大きな学校の鞄を持っている。


部活やったんかな…?


そっと荻に近づいた。

私に気づいた荻は耳からイヤホンを外しながら、嬉しそうに口元を緩めていた。

「お、亜樹」

「荻…ごめん…」


わざわざ来てくれてありがとう。

あの時、どうしても言えなかった言葉。


“わざわざ来てくれてありがとう”なんて、好きで来てくれてる気がしたから、言うのがなぜか嫌やった。

その後、照れる荻の顔が想像付く。

荻の照れる顔はあまり好きやない。


私のことが好きみたいに見えるから。