予約の客が全てチェックインを済ませた事を再度確認したミサ子は慣れた手つきで予約台帳をバインダーに綴じると、カウンターを出た。

玄関を入ってすぐの所にある20畳程のロビーに作り付けのカウンターがあり、その下に大きな鉄製の金庫と書類棚。

カウンターの後ろは壁になっていてミサ子は普段、別の部屋にいる。

普通だとカウンターの奥に別室があったりするのだが土地の関係上どうしてもこういう造りになってしまった。

そう言えば大牟田はカウンターの下に金庫を置く事に反対したものだ。

しかしこんな山奥でしかも冬には数メートルも雪が積もる所から百キロ以上はある金庫を持ち出す物好きもいるまい…とミサ子は一笑に付したものだ。

実際この『ペンション・セカンド』を開業してからというもの、一度も空き巣被害が無い。