結論的に愛し合っていると美談を持ち出す彼にしても、ミナナにとっては『俺以外を欲しがらないから』が気になった。
そんなことはない、と言いたいものの、ミナナは確かに無欲だ。
もちろん、お金欲しいや本が欲しいなど思ったことはあれど、口に出すまではしない。
そんな私欲口に出したところで降って湧いてくるわけでもあるまい、とはミナナには当てはまらなかった。
ミナナには彼がいる。おおよそのこと、できる限りのことを尽くす彼がいるのだ。
お金が欲しいとなれば大金入ったアタッシュケースを持ってくるだろうし、本が欲しいと言えば図書館を占拠する。
馬鹿な話と思えど、図書館については前に彼はやった。立てこもり犯に違いないが、彼は実際に、“図書館をプレゼントしようとした”。


