妖怪退治屋として冬月は、妖術にある程度の耐性が備わっているはずだ。
人を惑わすあやかし者は多い。妖怪に返り討ちにされないように、修練は積んでいる。
「もうおしまいだ。兄さんが愛してくれないなら、生きる意味がない。苦しい、痛いよ……。ああ、こんな気持ちになるなら首を切りたい。でも、一人は寂しい。やっぱり僕には兄さんしかいない。
兄さんしか要らない。生きていようが死んでいようが、そうだ、兄さんなら愛せる。僕は大声で言えるよ。兄さんが好きだと……!」
あやかしの惑わしにかかるのは弱みに漬け込まれたせいか。
歯噛みをしながら、秋月は全てを知った。


