やはりあの包丁が原因かと悟ったのは、包丁に付着していた血がなくなっていたから。
地に払われたわけではない、水を吸い込むスポンジのように血を飲み下す黒鉄。
人斬り刃には意思が宿ると聞いたことがあった。
長年使われた物に魂が宿るのと同じ、いわば付喪神(つくもがみ)の一種。
処刑刀として名を馳せる、物から妖怪と化した妖刀・千刈刃(せんがりとう)。
血を飲む刃は、担い手の意思に侵食し人を斬り続けさせる。生きようが死のうが、繋がっているなら体が朽ちるまで寄生する忌むべき妖刀だ。
こうなればあの化け猫もいわば犠牲者か。
冬月の斬りつけもあの千刈刃のせいとしても、斬りつけの節々に加えられた叫びが気になった。


