狂気の沙汰に寒気がした。見た目からにして異常な物体。
脛から立ち上がった右足のせいで、猫の体が斜めに、傾いたままの天秤のようになる。
義足をなくしたみたいだ。猫の右足はもともとなかったのかとも思わせる。
そんなはずはない、どう見てもあの足が偽物なわけがないのに、なんで玩具のように粗末にできるんだ。
「なんなん、あんさん」
化け猫風情にしとくはおかしい猫に問いかけても答えない。黙ったまま、口はあるのに開きもしないし、呼吸すらもしていないようだった。
閉じない瞼も硬直している、動く剥製ではないか、これでは。


