「っっ、その口、縫い付けてやる……!」
「落ち着いてくださいよ、十束」
腕を掴んで止める朱耶も笑っていたが、あからさまではない分、いつも通りの笑顔だと十束は思えた。
「毎度のことながら、止めないでください!」
「毎度のことながら止めますよ。ダメですよ。Aちゃんは私の大切なお友達なのですから」
「たい、せつ……」
意気消沈したような声を出し、十束はうなだれるように俯いた。
「お嬢様は、Aを庇う。大切だからと。お嬢様は俺を止める。Aが大切だからと。つまりは、俺はこんなA以下の存在。教養もない知性もない裏拳使う横暴暴虐神の化身たる、あんな牛女以下の存在だなんて」
「おい」
口を出したAに見向きもせず、十束は自分の首を絞め始めた。


