靴を脱ぐ前に、おっとと玄関に備え付けていたブラシでジャケットの埃――なんてないのだが、まるで外の空気自体が埃だと言いたげに、十束はジャケットをブラッシングした。
締めにはファブリーズ。しゅしゅ連打で、臭いともに雑菌をなくし、やっと彼は部屋に足を踏み入れて――アイスの棒をAに投げつけた。
「やあねぇ、危ないじゃない」
危ないと言うわりにはちゃっかりきっちり、片手だけでアイスの棒をキャッチしたA。手にしたものを見れば、アタリつき棒だ。
「いやだわぁ。あなた、駄犬じゃなくニワトリなの?アタリ棒交換のおつかいを頼んだのに、また持ってくるだなんて、ダメな子ねぇ。忘れるなんて。
『はじめてのおつかい』に出る子の方が優秀だわぁ。ほら、子供以下になりたくないなら早く行きなさいよ。なんなら、テーマソングつけちゃうわよぅ」
ドーレミファソーラシド、と音程外れながらもリズムは合っている例の音楽を聞いて『さあ行こう』と。


