我が身を抱きしめ、興奮をいさめるように、朱耶はうっとりと目を細めた。
「幸せすぎると怖いって意味がようやく分かったよ。小さいころ、おおよそながら当たり前の幸せがなかった私にとってその言葉は『贅沢だ』ってイラついたりもしたけど、贅沢も言いたくなるよねぇ。
この最高の幸せを死んでも続けたいと思うんだから。失うことなんて考えたら泣けてきちゃうよ。怖い、本当に怖い。私には彼しかいないのに。
やっぱり今の幸せを続けるには“停滞”がいいんだろうね。“このままが最善”なんだよ。彼はどんな私でも受け入れてくれるけど、私はこのままがいい。今のやり取りが気に入っているからね。
ゆるやかぁに、時計の針だけが過ぎていくような“停滞”がいいな。――まあ、長いことお嬢様役をやったから板についちゃったって言うのもあるけど。
女優さん気分って言ったら怒られちゃうかもしれないけど、うん――もう」


