もう見たくない。
泣く彼女も、気丈で飾る彼女も、たった一人でいようとする彼女も。
殺したいんだ、殺したい奴らがあたりでうろちょろと――
彼女を好奇の目で見るな、名を呼ぶな、触るな、声を聞くな、やめろ、やめろやめろやめろ、彼女を感じていいのは俺だけで、彼女は俺だけを愛しているのに……!
ああ、ああっ、ああっ。何もかもが汚ない。彼女の周りは汚ないものでいっぱいだ。
汚すな、汚すなよっ。彼女に近寄る足など切り落としてやろうか。
次は手だ。次は耳だ。次は舌だ。次は目だ。
彼女と同じ空気を吸った肺も憎たらしい。全部、抉り出す。死ぬなよ、まだ死ぬな、終わってなどいない、これからだ。彼女と一緒にいるだけで死罪というのに、こんな簡単なことで死ぬんじゃない。


